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雲南市木次町・シモキタ計画

「シモキタ」計画(亀尾佳宏)


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転勤を命じられたとき、恥ずかしながら次の赴任地がどこにあるのかよくわかっていなかった。

わからなくたって4月からそこで生活しなきゃいけないんだからと、その夜同僚と新しい職場を探しに車を走らせ、意外なほどの近さに驚いた。その年の11月に「雲南市」と名前を変えた町である。

それから10年。年を経るごとにこの町が好きになる。春の桜、夏の蛍。季節ごとに姿を変える山と川。この地にしかない固有の歴史があり、食べ物はうまいし人はあたたかい。数えだせばきりがないけれど、「劇場」があることもまた、この町を好きにさせる理由だ。

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雲南市には「チェリヴァホール」という商業施設に併設された劇場がある。

JR木次駅の目の前。松江道三刀屋・木次ICから5分ほど。松江、出雲から車で30分以内。三次からなら40分。米子からなら60分。出雲空港からなら20分。駐車場は無料。交通の便の良さなら島根で一二を争う。けれども、残念なことにアクセスの良さがそのまま利用者の多さにつながるわけではない。

 


「笑われるかもしれませんが―」

そう前置きしたあと、チェリヴァホールの館長さんはにっこりと微笑んで続けた。「僕はこの町をシモキタザワにしたいんです」
 
 

「下北沢」とは新宿・渋谷から十数分のところにある賑やかな町。通称「シモキタ」。

ライブハウスや小劇場がいくつもあり、毎日のようにどこかの劇場で何かが上演され、多くの演劇ファンがその地を訪れる、日本における演劇のメッカとも呼べる場所。

雲南市をそんな町のようにしていきたい、館長さんは確かにそう言った。


かたや東京都世田谷区、かたや島根県雲南市、双方の町を見比べなくとも、あまりに落差のありすぎる比較に笑う人もあるかもしれない。

でも僕はちょっと胸が熱くなった。


東京でも大阪でも名古屋でも福岡でもない、この島根に演劇を観るために県内外から人が集まってくる。

ロビーには開場を待つ人の列、旅館には泊りがけで観に来た来訪者、開演前は劇場付近の食事処で空腹を満たし、終演後は芝居の感想を語りながら酒を飲む。


チェリヴァと木次駅と商店街を小田急線下北沢駅周辺の人波ごったがえす風景と重ね合わせ、わくわくした。


 
 

「公共ホールは利益追求のためにあるのではなく、そこに人が集まり、町が元気になるためにあると思うんです。」館長さんはさらに続けた。

今、その役割を果たしている劇場が全国にどれほどあるのだろうか。


利用率の低下を嘆き、維持費による赤字を批判され、改修の予算はつかず、果ては合理化の名のもとに休館閉館においこまれているところもある。

劇場とは人が集まり楽しむ場所だ。あるいは何かを発信する場所だ。その役割が果たせなくなったとき、劇場は劇場でなくなる。






チェリヴァホールから市民劇を創りませんかというお話をいただいたのはそれからしばらくしてのことだった。


参加者を公募したところ、雲南市はもとより、松江、出雲、大田、米子など、50名をこえるキャスト・スタッフが集まった。お金がもらえるわけでもない、やらねばならぬ義務があるわけでもない。にもかかわらず社会人、主婦、学生といった年齢も生活環境も異なる者たちが夜な夜なチェリヴァホールに現れ、稽古を重ねる。


素人の大集団が一つのものを創りあげようというのだから苦労がないわけがない。

それでも稽古場は笑いが絶えず、早く帰ればいいのに終わった後も時間が許す者たちはまたどこかで集まって遅くまで語り合う。


それはさながら大人たちの部活動だ。

ただただ無心にボールを追いかけたりグランドを走ったりした学生の頃の光景が、チェリヴァホールでよみがえっている。


そうやって完成した2012年「異伝ヤマタノオロチ」は6ステージ1500名、2013年「水底平家」は2ステージ900名の観客を動員した。



 


演劇というのはよく花火にたとえられる。

どれだけ苦労を重ねて創りあげても、開くのは一瞬。
ただそれをみにきた人たちだけのために輝く。ただ消えていくだけ。作品としての形は残らない。


けれどもそれを創りあげてきた時間の中で育まれてきた仲間たちとの縁は終演後も続いている。

桜の季節には花見にかこつけ集まる者たちがいる。声かけあって新しい劇を創り始める者たちがいる。



米子から参加していた若者二人は「異伝ヤマタノオロチ」の終演後に雲南市に移り住み、「水底平家」の稽古期間中に結婚し、披露宴もまたチェリヴァホールで芝居仲間の祝福を受けながら催された。

そして先日、二人は新たな命を授かった。

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さて、最初の話に戻ろう。
 


 
雲南市には「チェリヴァホール」という劇場がある。

JR木次駅の目の前。松江道三刀屋・木次ICから5分ほど。松江、出雲から車で30分以内。三次からなら40分。米子からなら60分。出雲空港からなら20分。駐車場は無料。



これまでみなさんにとっては関わりのない場所だったかもしれない。


けれどもそこは、ちょっと足をのばしてのぞいてみると、素敵な物語に出会えるかもしれない場所。





「シモキタ計画」は、まだ始まったばかりだ。

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【お知らせ】
創作市民演劇『水底平家~再演~』

脚本・演出:亀尾佳宏
主催:雲南市演劇によるまちづくりプロジェクト実行委員会

【場所】
チェリヴァホール(2Fホール)

【日時】
9月14日(土) 18:30開場 19:00開演
9月15日(日) 13:30開場 14:00開演

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2013/09/12 10:55 |未分類COMMENT(0)TRACKBACK(1)  

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